西森 とよね
まとまった文章を書いたり、ましてや本を出版するなんて生まれて初めての経験でした。70歳になって、やっと気持ちにゆとりができたのでしょうか。苦労の連続だった人生を振り返ってみたいという気持ちになりました。
小さい頃、母と死別。満州から引き揚げてから、戦後の混乱期を貧しさと闘いながら無我夢中で生きてきましたので、満足な教育を受けていません。
文章が書けるかどうか不安だったのですが、原稿用紙に向かってみると、堰を切ったように言葉が出てくるのにはびっくりしました。
今読み返してみると、言葉足らずで満足がいかないところもありますが、自分の人生に区切りをつけたという点では良かったと思います。(談)
書き慣れない文章を一生懸命に書いている西森さんの姿に心打たれました。人間いくつになっても出発点ということを、西森さんから学びました。この本を担当させていただいて編集の仕事に携わってよかったと心から思えました。
内田 町子
20数年間描いてきた水彩画と絵手紙、そして母の水墨画と日本画を一冊の本にまとめたい……という夢。当時90歳になる寝たきりの母が後押ししてくれたのでしょうか。せせらぎ出版さんとの出会いでその思いが一気に加速し、結実しました。
500冊印刷した本はあっという間に、手元から飛び立って、人から人へ渡っていきました。絵手紙のサークルの仲間、お店のお客さんなど、ほとんどの方から「元気をもらえた」と言葉をいただき喜んでもらえました。さらに多くの人たちとの出会いが生まれ、その輪のなかで、私の方が元気をいただいていることに気がつきました。
出版から1ヵ月後、母は安らかに息を引き取りました。あの世で、ゆっくり娘との作品集を見て、楽しんでいることだと思います。
出版社の方には、私のいろんな希望を、その構成力でうまく一冊の本にまとめていただき感謝しています。(談)
内田さんの熱い思いが凝縮した本になりました。単なる自分やお母さんのためだけの画集でなく、手にとっていただく人への力強いメッセージがこめられています。文章も簡潔で力強く、パワフルな「内田町子ワールド」に引き込まれていきます。お手伝いさせていただいた私も元気をいただいた一人です。